ゴリラに。愛を込めて
最近ゴリラが妙に気になる。もしかしたらもう好きなのかもしれない。
幼い頃にリスザルに噛まれて以来、猿は私にとって脅威であり天敵だった。
動物園へ出掛けてもチンパンジーやマントヒヒの檻などは立ち止まることなく鼻で笑って通り過ぎていた。
もちろんゴリラも奴らと同等だった。
しかし、今夏気まぐれに出掛けた動物園で久々にゴリラを見た刹那衝撃が走った。
ガラス越しのゴリラは日常に惓んでいた。何かを諦め切ったような、そんな目をしていた。
こんなに切ない表情を浮かべる動物を他に私は知らない。
ゴリラについて何も知識がなかったので調べてみると、彼らは私が思い描いていたゴリラとは大きくかけ離れた生き物であった。
・あのルックスで菜食志向
ゴリラは雑食だが、野生のゴリラは植物を好んで食べる。たまに昆虫で動物性蛋白質を摂ることもあるが、基本的に肉は好まない。
チンパンジーやボノボは別の群れの猿や他種の猿を捕食するが、ゴリラが猿を捕食した目撃例はない。
しかし雑食なので肉を食べられないというわけではない。アメリカの動物園ではゴリラにフライドチキンを与えているところもあるらしい。
・温厚な性格で戦いが嫌い
縄張りに入ろうとするものにはドラミングで威嚇したり、木の枝をボキッと折ってみせつけるが、そうして派手に威嚇することで相手を遠ざけ実戦を避けている。
実際、ゴリラが人を襲うことはほとんど無い。
むしろ、ゴリラは人間を救うことがある。
動物園でゴリラの檻に落ちた人間の子供をゴリラが救うというケースは世界で何件か報告されている。
日本の多摩動物公園でも女の子がゴリラに助けられている。
・繊細でストレスに弱い
ストレスで下痢をしたり、心臓系の疾患にかかりやすい。ゴリラは見た目によらずナイーブな生き物なのである。
・頭がいい
ローランドゴリラのココちゃんは現在2000語以上の手話を用いて人間と会話が出来る。
絵本で見たネコを気に入りペットに欲しいとねだったり、歯が痛いと訴えたり、時には嘘やジョークを飛ばす。
死についても理解していてゴリラはいつ死ぬかという問いには「年老いて 病気で死ぬ」と答え、更に死んだらどこにいくのかという問いには「苦労のない穴に」と答えている。
個体差はあると思うが、かなりの知能の持ち主である。
なんだか調べれば調べるほどゴリラの深みにハマっていく気がする。
キングコングのイメージから凶暴で好戦的な生き物だと思い込んでいたゴリラだったが、
今では心なしかゴリラがジェントルな生き物に見えてきて、敬意すら芽生えている。
実は優しくて繊細で知能の高いゴリラ。
そんな彼らが動物園で見せた、あのガラス越しの虚ろな眼差しの意味を考えてしまう。
これから動物園でゴリラに会う時はお辞儀をしようとおもう。
敬意と愛情を込めたささやかなアピールだ。
もちろん周りに人が居なければの話だけれど。